このジュースは、さっき。露天で買ったものだ
潤也の着ているシャツが、体に張り付いている。
糖分が多いせいか、ベトベト。
しかも、グリーンのドット柄。
車内に漂う甘い香り。

『炭酸なんか飲んでるからでしょ。しかも、メロンソーダだし。シャツが、ダルメシアン柄だよ。』

つい。

また笑ってしまった。

「だってさ。小さい頃、道を歩いてる同級生が飲んでたのを見て、いつも羨ましくて。でも、絶対飲ませてもらえないの分かってたから。だから、言わなかった。」

『ダメって言われるのが怖くて?』

「うん。いつも、先を読んで可能性の低いものは、すべて諦めて生きてきた。」

『それで。初めて飲んだご感想は?』

ふざけて、インタビュー風に、手をマイクにして潤也の口元に差し出した。

「これは、とっても甘いですね・・・。子供の頃に飲んでみたかったな。その頃なら美味しかったかな?」

私は、座席の背もたれに寄りかかり、遠くの見た。

『そうかもね。小さい子って、ホント美味しそうに飲むもんね。今じゃ甘すぎて飲めなかったりもするけど。そう考えると、美味しく飲める年齢って短いのかもね・・・。でも、私は今でもクリームソーダが好きだな。』

潤也は、手にしたジュースを私に差し出した。

「30過ぎてもまだまだ子供ってことじゃん?じゃあ、残ったの飲んでねっ。」

潤也は服に付いた、ジュースをタオルで拭いている。

『はぁ?』

と、言いつつ・・・。
差し出されたジュースを一口飲んだ。
炭酸がちよっぴり抜けて甘ったるい味がした。・・・・・。

きっと、潤也は後悔してるのだ。


・・・・。

彼女と別れたことを・・・。


しかも・・・。


彼女は、あの時。


私が、潤也と出会った立食パーティー。


潤也が目で追っていた女性・・・・。

そして。
潤也の事を見つめていた女性だ。