店内には、所狭しと置かれているショーケース・・・。

以外だよ・・・。
こんな、お洒落なお店でカルロが指輪を買うなんて・・・。
カルロには、飾りっ気の無いお店が似合う。

さっきの店員さんが戻ってきた。
店の奥から取り出してきたのは、四角い箱に入っている。

もちろん。

指輪です。

中身は、シルバーのシンプルなやつ。

・・・・・。

いいな・・・。

私もほしいよ・・・。

・・・。

私は、ショーケースをキョロキョロと覗いていた。
頭越しに潤也の声がした。

「置いてくよ。」

『はぁい。』

素直に応じましたけど・・・。
べつに・・・。

用事ないもんね。
ジュエリーショップなんかにさっ。

潤也、お店の店員さんに、軽く会釈をして店を後にした。
私も、それに続いて・・・。

「カルロ。結婚するんだってね。昨日聞いた。」

潤也の隣で、歩幅を合わせて歩く。

『そうだね。明日帰国なんでしょ?』

「そうらしいね。」

『さみしい?』

「ちょっとね。」

『慰めてあげよっか?』

私、調子に乗って頭を撫でるふりをした。

「おい。ちょっと、やめろよ。」

満更、嫌そうでもない潤也。


そうだ・・・。
カルロに聞いた・・・。

《あいつ、結構寂しがりやだから、慰めてやってね。小学生の頃、いっつも泣いてたんだ。イタリヤに移住して、日本人の友達に会えないって。八つ当たりさ。》

・・・。

きっと、寂しいんだろうな・・・。
潤也・・・。