暫くして、周囲を見回す彼。
サッと、私の体を離した。
かなりの力で抱きしめられていたせいか。
体が痛い・・・。平衡感覚を失った。
しかも、急に開放されて・・・。

ヨタヨタ・・・。
まともに歩けない。
ストン・・・。
そのまま、後ろのベンチに腰を掛けた。


私をじっと見つめてる。
余りの、美形な顔つきに絶句。
彼、こんなカッコイイ人だったんだ。
しかも、近づいてくる・・・。

一歩。

また、一歩。


収まっていた動悸がぶり返してきた。
ドキドキする。


周囲が暗くても、はっきり認識できるくらいの距離になった。

近い。

何?
そんなに、じっと見ないで・・・。
なんか、ちょっと今後の展開期待しちゃうでしょ。

まさか・・・。

キス。。。。。。


と思ったら・・・。
様子が、おかしい。

彼、子犬のように鼻。
クン、クン。

次に発した言葉。
しかも、うれしそうな表情。

「ローストビーフ食べたでしょ?うちの美味しい?」

きょっとーん。
っていうか、ギョッ。
と彼を見てしまった。
しかも、かなり目見開いて。


「すみません。髪に付いてたんです。ローストビーフ臭。」


どうやら、さっき食べていた時に、髪に付いたのだ。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
途端に顔が真っ赤になっていく。暑い。

くすくす。
笑ってる彼。

・・・。
ちょっと意地悪そうな笑顔。
なんだかちょっと、ムカツク。
男なのに、小悪魔みたいな表情。