どこにでもあるような何の変鉄もない居酒屋。



「いらっしゃいませ~」


バイトの女の子のよく通る声が響いた。


ここの焼き鳥がすごく美味しいと、男は言う。



わたしとしては
貰うものさえ貰ったし。


後は数時間付き合うだけであって
場所なんてどこでも良いし相手が誰でも良い。


強いて言うなら
お高い高級な場所じゃなくて良かったなってくらい。


お嬢さんでもなんでもないから、
そんなとこ連れて行かれても困るし。






男に続いて入ると、
さっきの店員が寄ってきた。


「お客様、年齢確認が出来るものはお持ちでしょうか?」


笑顔だけど、有無を言わさぬ店員。

明らかに若く見えたのかも。


そう聞かれると男はわずかに動揺した顔を見せる。



めんどくさい。



「今日は持ってません。
でも、お酒飲まないので」

わたしは笑顔を作って言う。


「かしこまりましたー。では、こちらへどぅぞ~」


お酒さえ飲まなくて、店に迷惑が掛からないと分かるとすんなり通れる。





「ユキちゃんは飲まないのかぁ」


「お酒、あんまり好きじゃないから」


残念そうな男に、いつも使う台詞を言う。



飲み潰そうとでもいうのだろうか。
残念ながらあんたと朝まで過ごす気なんて
さらさら無いわ。


「そうかぁ 残念だなぁ」


「……」

しつこいなぁ。


「焼き鳥」


「え?」


「焼き鳥が美味しいんでしょう?
食べようよ」


男を見上げてねだると、
予想通りの単純さで、笑顔に戻る。


馬鹿で助かる。


「じゃあ食べようか。
好きなもの、頼んだら良いよ」