赤い…

目に映る何もかもが真っ赤だ…


夕暮れ時。
今のこの時間がこのホテル最大の目玉。

2人で手を取り合いながら、愛を語り合うはずだった。


なのに…


この部屋で聞こえるのは、規則的に軋むベッドのスプリングの音と、出したくなくても自然に漏れる吐息混じりの声。


時々、彼は耳元で愛を囁くけれど、それでは語り合ったことにはならない。

彼の顔が目の前にあれば、睨み付けてやるのに。

私のぼやけた視界に映るのは真っ赤な海と空、そして夕日。


何故いつも私を振り回すの?

年下のくせに。

私がいつまでもいいなりになると思ってる?


今すぐにでも、私の後ろで独りよがりなこの行為に、夢中になってるこいつを、突き飛ばして、口汚く罵ってやりたい。








でも、

頭が痺れる。

体が反応する。

声が大きくなる。


彼の愛の囁きに、流されて溺れていく。


彼が私を貫く度に、何も考えられなくなっていく。

私は髪を振り乱して、
彼の動きに合わせて体を振って、
ただ、彼を求めるだけになる。


離さないで。

このまま、私と繋がっていて。


年上というプライドと、変な常識に囚われた私の頭が、余計なことを考える余裕を与えないで。


もっと…もっと…


私をあなたでいっぱいにして。


あなただけを感じさせて。


目の前が暗くなっていく…


それは、夕日が姿を消したからなのか…

私が意識を手放したからなのか…


この部屋に聞こえるのは、彼の満足した息づかいだけ…