今日は、3日久しぶりに晴れた。

裏の森には、多くの鳥がさえずり、久しぶりの晴れ間を喜んでいるようだ。
さわやかな風が頬を横切った。緑のいい香りがする。
森の木々は、ザザザっと音をたてて揺れている。

「今日は、きっと誰も来ないかな。」
空を見あげた。

私は、いつもより入念に掃除を始めることにした。

早速、乾燥機の中を雑巾で拭いた。

ピカピカに綺麗になる。

気分がいい。

モップで床を拭く。

念入りに念入りに・・・。

母親に、毎日のように掃除をするように言われた。

「瑛子。掃除は、心を綺麗にするのよ。」

母の口癖。

面倒くさがりな私は、嫌々だった。
 
最近、分かるようになった。

綺麗になるのは、気分も良くなる。すっきりした。

掃除に熱中しすぎて、周りが見えなかった。

いつの間にか店内に人がいた。

乾燥機の前に立つ、若い男性に気が付きビックっと体が震えた。

「すみあせん。脅かすつもりは無かったんですけど・・・。あの・・・。」
ばつが悪そうに、彼は言った。いい人な雰囲気がする。

私は、顔を上げて微笑んだ。
ナンパ?・・・ではなさそうな表情だ。

「なんでしょうか?」

言ったと同時に、この間の忘れ物が頭をよぎった。

そうだ。

あっ。

「指輪。」

「指輪。」

二人同時に発した言葉が一緒で、お互い噴出してしまった。

どうやら、話を聞くと、最近彼女と一緒に住み始めたらしい。
同棲中。
うらやましい限りだ。

彼女と一緒のペアリングを無くして焦ったようだ。

「はい。これ。今度は無くさないようにね。」

彼に手渡した。彼は、喜んだ表情で言った。

「ありがとうございます。」

幸せそうな彼に少し嫉妬した。

彼女はどんな人なのだろう。

彼の笑顔に、心がぎゅと掴まれた気がした。