今日は、天気が良く晴天。
裏の森の木々は、青々と茂りはじめた。
寂しげな森が一気に、騒がしくなった。

花も、鳥も、昆虫も、喜んでいる。
天気がいいから、なおさらだ。
海外では、悪魔の使いと言われ嫌われているカラスも、今日はなんだかうれしそうに飛び回っている。

瑛子は、いつものように、椅子に腰を掛け。
ガラスの外を眺めた。

ガラス越しに見える景色。

自分が、異空間にいるようだ。


女の子が父親と手をつないで歩いている。
買い物の帰りらしい。
斜め向かいのアパートに最近引っ越してきた家族だろう。

店の前で、急に女の子が立ち止まった。

女の子は、父親に、

「競争しょ。よーい。ドン」

と言った、瞬間、走り出した。
あわてて、父親も後を追った。

女の子は、家まで、競争したかったようだ。

父親は、女の子よりちょっと後ろを走っていった。

家の扉の前、ゴールに着いた、二人は微笑んでいた。
楽しそうに扉を開け、

「ただいまぁ。ママ!今ね。競争して勝ったんだよ。・・・・」


なんだか、うらやましい。

近くで見ているはずなのに、とても遠くに感じた。

遠くの距離、縮まることは無い。

自分には、無い記憶。

一人の孤独な時間。

寂しい記憶、押し流されそうになった。