「いいん、ですか…?」
抱き締められたまま、彼の顔を見上げる。彼は優しく笑い、キスをくれた。
その後タクシーで私の家に二人で帰り、まるでそうなる事が当たり前かのように私は彼に抱かれた。お互いの指は相手を求め合い、私は彼の右側に行って手を繋いだ。
始まりと終わりの予感を秘めた今を精一杯味わいながら彼に抱かれる事は、あまりにも深い幸福と快感の渦に私をひきずりこんで、私は必死に彼にしがみついてその名を呼んだ。
朝になり、彼は家へと帰っていった。駅まで見送った私の頭を彼は撫でながら「またな。」と笑ってキスをした。
季節は夏に向かい、私は緑を濃くする木々に微笑める程に幸福な余韻にひたっていた。

その日の晩、「今日行ってもいいか?」と電話で聞かれて、私は喜びで応えた。