無事に閉店を迎え、着替えてトイレから出た私の前には、私服になった男らしい彼の姿があった。
広い肩幅に私が見とれていると、彼は私に気づいて笑顔で言った。
「ありがとな。理奈ちゃん。」

彼の口から思いがけず出た私の名前に、覚えてくれたという喜びと共に私は自分の名前が好きになった。心なんて単純なものだ。

「終電ないだろ?とりあえず飯食いに行かないか?」
「はい、是非!」
バイト後なのに張り切り過ぎている私は滑稽だったかもしれない。ただ、若さはその滑稽さすら元気という印象の裏に隠してくれていた。
「酒でも飲むか?」
歩きながら尋ねる横田に、
「はい。」
と答える。