その日は、遅い時間帯によく飲む客が二組来てくれたおかげで、閉店時間が遅くなった。
私はヘルプだったし帰ってもいいとは言われたのだが、
「お店を閉めるまで手伝わせて下さい。」
と真面目なフリをして言った。
彼は
「ありがとう。」
と答え、また仕事に戻った。
閉店時間が遅くなるという事は、もう既に恋の中にいる私にとってチャンス以外の何物でもなかった。
注文が落ち着いている時になにげなく彼と交わす言葉にも私は微笑をたたえるほどにときめいていたし、彼の近くにいるというだけでも私は酔っていたのだ。