話を切るようにハーゼオンがパンッと手を打ち鳴らした。
「そうと決まったらさくさく食べちゃおうか」
食べる、という言葉に私は首を傾げる。
お茶菓子はもう既に食べてしまっていた。食べるものなど、どこにもない。
「食べるって何を?」
「え、花嫁に見せる気なのか」
「俺は別に構わないけど」
ハーゼオンとルーが私の顔を伺った。どうもこの二人には話を勝手に進めていく癖がある。
「花嫁がいいなら、いいけどさ」
「あの、何を」
言いづらいそうなルーとは裏腹に、ハーゼオンは平然としていた。
「俺が、同族喰いをするところ」
同族喰い、というのはなんだか物騒な響きである。頭から、ばりばり他の吸血鬼を食べてしまうんだろうか。
いや、まさか、そんなことは…。
「吸血鬼は、どうしても噛まれた相手に魅了されるから、連れていくなら噛んだ吸血鬼をこいつが取り込まなきゃいけないんだ」
「それを今からするの?」
「見ても気分のいいもんじゃないから、嫌なら見ない方がいい」
示された選択肢に私は僅かに迷う。だが、答えはすぐに決まった。
「見るわ。このことに関しては無関係じないから、事の顛末までちゃんと見届けたい」
私に関係のないことなら見ずに通り過ごしたかもしれない。
でも、もう私は関わってしまっているのだ。
助けられなかった少女たちの行く末を知っておく責任がある。
「そうと決まれば早速やろうじゃないか。いざ行かん、館の奥へ」
「子供の冒険じゃねぇんだから…」
やれやれとルーは肩を落とす。子供の姿とは不釣り合いな疲れた大人のような仕草だった。