三人が三様に気まずく沈黙する。
静寂の中、一番初めに口を開いたのは、ハーゼオンだった。
「どういうこと?」
ルーが簡潔に今までのことを話し出す。
件の吸血鬼が人を襲ったこと。それによって私が勘違いをし、青い吸血鬼を怒らせたこと。そしてその結果、私が花嫁になったことを。
「あんたがもっと早く知らせてくれていれば、手の打ちようがあったのに」
「あー……」
聞き終えたハーゼオンは頭に手をあて、長く息を吐いた。
「この国は青珀の領域だから心配ないと思ってたんだ。ごめん、俺が考えなしだったよ。てっきり、やっと側に置いてもいいと思える可愛い花嫁が出来て、絶好調なんだとばかり」
目の前の青年は本気でしょげているらしい。同じ吸血鬼なのに、ハーゼオンからは威圧感を感じなかった。
色々な吸血鬼がいるのだと、私は密かに驚く。
青い吸血鬼の印象はそれほどに強かった。
「一発とは言わず、気の済むまで殴って下さい」
「その、少なくとも私が花嫁になったのは、あなたの責任じゃないと思うわ」
頭を私へ差し出すように下げたハーゼオンに私は告げる。私が怒るのは、違うように思うのだ。
謝るのなら、そう、もっと別の。
「そういえば、吸血鬼に噛まれた子たちの方がいたわよね。あの子たちどうなったの?」
吸血鬼に噛まれた二人の少女はルーたちが連れ帰ったはずである。薄情ながら、すっかり忘れていた。
私の言葉に、ルーは思い出したようにあぁと返事をする。
「館の奥に眠らせてある。二人の行き先をこいつに頼もうと思ってたんだ。…構わないだろ、赤赦殿」
「もちろん、我が赤赦の名にかけて」
ルーの問いにハーゼオンがにっこりと微笑んだ。