「ええええええええええええ!?」

「あゆ、声でかいっつーに」

「鮎佳ちゃん、どーかした?」

 駿太さんが話しかけてきた。

 あたしはドキッとして

「ええええ!?

 なんでもないです!」

「もしかして愛、変な事吹き込んだんか?」

「ばーか。そんなんやないから!」

 姫香さんはべーっと舌を出した。

 駿太さんがあたし達に背を向けた後、姫香さんはあたしにヒソヒソ声で

「あゆ!気づかれたらうち、終わりやねん!」

「ご、ごめんなさい;」

「ま、いいわ。

 1回フラれとるし」

「えっ…

 告ったんですか?」

「あ、敬語。

 小さい頃、“結婚しようね”って約束したんに、

 今彼女持ちなんよ…」

 姫香さんは寂しそうだった。

「あ、やっぱ敬語じゃないと無理です」

 あたしはあえて違う話題を持って行った。

「えー!?

 まあ、ええけど。

 そういえばあゆ、学校で友達できたんか?」

 ほっ。

 話がそれた。

「できました!」

「よかったなあ。

 科が違うから全然知らんくって。

 あ、あゆさあ、坂本安和って知っとる?」

 坂本安和?

「知らないです…」

「そっかあ。

 その人な、今28歳やねんけど、保育科の1年で、同級生やねん!

 うちなあ、夜遅くの仕事やから、なかなか学校行けんくって単位ないねん。

 やからまだ1年なん♪」

 つまり“留年”だ。

「あ、でな。

 安和と仲ええんやけど、埼玉出身っていうから、顔見知りかな、思て。

 知らんかったらえーんやけど」

 でも…




 何か聞いたことある名前…。