姫香さんは

「今日は店もう出るから、一緒にごはん食べへん?」

 と誘った。

 もちろん、断る理由もない。




「オーナーって孤独な感じ、しいひん?」

 姫香さんがぼそっと呟いた。

「何かな…男ぐるみの」

 そういう面では何か現実的だ。

「孤独な感じはします」

「やろ!?

 でも、何も言ってくれへんねん。

 謎やねんよな」

 堺の町をぶらぶら歩く。

 歌舞伎町みたいな場所もあれば、六本木のような場所もある。

 あたし達がぶらついているのは、歌舞伎町のようなところ。

「ここのレストラン、美味しいんよ」

 姫香さんが立ち止まったのは、大人な雰囲気の喫茶店みたいな。

「うち、ここのシェフと顔見知りでな。

 割引きがきくんよ」

 姫香さんはうれしそうにドアを開けた。

「いらっしゃい!

 愛、久しぶりやな!

 初の友達連れか?」

「うっさいなーあ。

 駿ちゃん、久しぶりやなあ」

 姫香さん、すごく嬉しそう。

「この子は鮎佳。

 あゆ、こいつ駿太。

 うちの幼なじみやねん」

「こ、こんにちは」

「こんちは~。

 愛より可愛いんちゃう?」

「当たり前やん!

 東京からわざわざ若葉大学まで来よったんやで?

 可愛いに決まってるやん!」

 埼玉なんだけどね、本当は。

「駿ちゃん、いつもの2つちょーだい」

「鮎佳ちゃんのもか」

「あゆ、うちと一緒でええよね」

「はい!」

「あ、敬語やめてくれへん?

 慣れへんからな」

「わかりました!」

「もう使っとるし」

「あ…」

「あゆ、かわええなあ」

「どこが!?」

 びっくりした。

 こんなにまじまじと言われた事がなかったから。

「ここだけの話…」

 姫香さんは口をあたしの耳に近づけた。

「うち、駿太のこと好きやねん」