「いらっしゃい…ませ?」

 店の人がびっくりしている。

 そりゃね。ここキャバだし。

「あの…」

「あっ!

 あゆちゃん!」

 そう言って駆け寄ってきたのは…

「愛さん!」

「しっ!姫香やで?」

「あ、姫香さん…」

「来てくれたんやね!

 何?小遣いないんの?

 オーナーあ!バイト希望やで!」

 愛…姫香さんはあたしを奥の部屋へ引っ張っていった。




「オーナー!バイト希望の子ー!」

 奥の部屋に入ると、きれいな女の人(オーナー?)がいた。

「バイト?

 ああ、この子かい?」

「広田鮎佳ってゆーんやけど、めっちゃ可愛いやろ?」

「ふーん。まあええよ。

 衣装とかこっちで用意するからな!

 でも化粧は自分でやるんやで?

 できんかったら姫香にやってもらい!」

「うちかい」

「あと、源氏名やけど、“沙奈”でええよな?」

「オーナー、どうやって決めてん。

 うちん時はもっと悩んでたやんか」

「あんたん時も適当やで。もちろん、今も適当やけどね。

 あんたん時はもう1人いたから、時間かかってん」

「うちの同期?誰やっけ?」

「あほ。同期ぐらい覚えな!



 “あすか”やん。

 今産休中やけど」

「ああ、あいつか。

 あいつ産休なん?

 てか、沙奈と同い年ちゃう?」

 え?

「って事は、18歳なんですか?」

「ま、そーゆー事やね」

 オーナーがさらりと言った。

「あすかは…16歳の時にここに来てな。

 あ、もう2年目やなあ、あいつ」

 オーナーは煙草に火をつけた。

「ま、早速明日から仕事やで」

 そう言うと、あたし達に部屋を出て行くよう促した。