そんな親子をすっぱり無視し、アレンはベッドで眠る子供を羨ましそうに眺める。


「あー…、俺も寝たい…」

「この後にまだ会談があるでしょう」

「………わかってるよ」


彼女に指摘され一つ溜め息をつく勇者。


それをユーリが影から見上げて笑っていたが、幸いアレンは眠気MAXでそれには気が付かなかった。



 とにかく、眠い。


(…こんなことなら夜更かしせずにすぐに寝ればよかった。)



…彼がこう思うのは日常茶飯事。




「ほら、着替えなきゃ。ルシイル君の顔だけ見てすぐ行くんじゃなかったの、アレン」


レイがベッドから離れないアレンの腕を引っ張り、厳しい現実を惜し気もなく突き付けた。


大事な会談をサボる訳にもいかず、仕方なくアレンは頷いてそこから離れようとする。





 ──…が、その瞬間。





「…うぎゃあぁああああぁああああん!」





 ──…どでかい泣き声喚き声。





それがたった今離れようとしたベッドから、物凄い音量で部屋に響いた。



ビックリしたアレンは少し目を見開いてバッと振り返る。




そうして彼の珍しい碧の瞳に映ったのは、ぎゃあぎゃあ泣いている金髪の赤ん坊──ルシイルだった。