言葉を遮られたことに不満そうな顔をしながらも、マケドニスは頷くと気を引き締めた。
これから、レヴィオル国勇者の制裁者としての大仕事がはじまるのだ。
側近の自分も、中途半端な気持ちでは、挑めない。
「言っちゃあれですけど…、戦争みたいですね…」
軍で乗り込み、これ以上争いが激化せぬように止める傍ら、レイを救い出す。
簡単に出来ることではないし、兵力を掲げるのは同じこと。
思わず呟いたマケドニスに、アレンは目を細めた。
「…戦争じゃない」
歩みが、止まる。
「制裁だ」
その言葉に雨で霞むアレンの背中を、じっと眺めた。
どうやらこの短い墓参りの間に、何か考えていたらしい。
教皇の前では制裁という言葉を濁していた筈の彼は、ここできっぱり言い張った。
まだ20歳にもなっていないのに。
――…この威圧感は、何だろうか。
「レイに手を出したことは、許さない。けど」
振り向いた青年は、微笑んでいた。
一種妖艶なそれに、マケドニスは息を飲む。
「叩くだけは、ただの実力行使と同じだ」
雨の中、その声は凜と響いて。
まだその意味がわからなかったマケドニスは、少し眉を寄せるだけでそれ以上は何も言わなかった。