一方、その“彼”は。
「アレン、また背が伸…」
「びてません。…それ挨拶代わりにするのやめてください」
側近と二人、やって来た聖堂。
彼は教皇と対峙し、お決まりの挨拶専用爽やかスマイルをキメていた。
周りに控えている巫女さん使用人もクラクラ、相変わらずの殺傷能力だ。
「だってねぇ、見る度にこんなに大きかったかしらって…」
「……………………。」
会う度毎回大きくなったねぇ、と孫に声をかけるおばあちゃんのようだ、とアレンは思った。
さすがに失礼なので思うだけですましておく。
「今日はマケドニスさんもいらっしゃるのですね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
声をかけられマケドニスはぺこりと礼をする。
それをニコニコいつもの菩薩の笑みで眺めていた教皇は、さてと首を傾げると「お話は何かしら?」とアレンを促した。
「…まず、あの短剣のことで…」
「あら、持ち主が見つかりましたの?」
「…………………はい」
たっぷりと間をあけて返したアレンに、教皇はぱちくりと瞬く。
都合の悪いことでもあったのかと青年の次の言葉を待っていると、彼は顔を上げ真っ直ぐ自分を見つめた。
その碧い瞳に、…何故かぞくりと背中が粟立つ。