「いつまで逃げてたらいいのかしら…」


完璧に片付けた小屋を去り、森を歩く中ヴァンヌがふとぼやく。

握られた手に力が込められたのを感じ、デスティンはそっとその頭を撫でてやった。



「きっとあと少しだ。今はこうするしかない」

「……うん…」


ヴァンヌは移動する度に、こうやって少し元気をなくす。

隠れる場所を見つけるとそれはなくなるのだが、やはりそろそろ精神的な限界が近付いていた。


キュッと手を握って、デスティンに身を寄せる。

そうでもしないと、耐えられなかった。

こんなとき、この人の存在がどれだけ大きいかを思い知る。



「デスティン」

「…何だ」

「愛してるわ」


まさかの不意打ち。

デスティンは驚きながらも目を細め、ヴァンヌに唇を落とした。


クスクス笑った彼女は、それだけでいくらか元気を取り戻したようだ。


デスティンは自分の表情も和らぐのを感じ、彼女のさらさらな髪を撫でながら依存しているな、と苦笑した。



「昔はあんなに嫌いだったのにな」

「? 何がぁ??」

「いや…何でも」


薄く微笑んで言えば、変なデスティン、と彼女も笑った。

こんな状況なのにそんなやり取りさえ幸せに感じる。



いや、こんな状況だからか。