一方、少し時間は遡って。



アレンらが過去から帰る数時間前、東大陸のとある小さな小屋では一組の天使と悪魔が移動の準備をしていた。



「歯ミガキ粉持ったー?」

「…そんなもの向こうで買えばいいだろう」

「じゃあ歯ブラシは??」

「……ヴァンヌ」


咎めるように目を細め、呆れた声を出すのはデスティン。

二人きりのときはいつもよりいくらか饒舌になる彼に、妻であるヴァンヌはてへっと笑った。



「ごめんね?兄さん来ちゃって」

「いや…疑ってる訳ではない」



先程アレンらより前に来ていたヴァンヌの兄、ラヴァネ。

彼の訪問により、夫妻はこの場を離れることを決めたのだった。


二人は必要最低限の荷物をリュックに詰め込んでいく。



「兄さんも一応天使だしねぇ…、まさか場所をバラしたりはしないと思うけど」

「……………………。」

「あっちょっと、それ私の下着!デスティンったら変態っ」

「ふざけるな」


バシッとそれをヴァンヌに投げつけ、デスティンは荷造りを終わらせた。

後は住んでいた形跡を消すのみ。


悪魔の男は妻の手を引き玄関を出ると、その類いの魔法を発動した。