「……死んだか」
動かなくなった身体。
閉じた瞳、体温を失っていく肌。
〈よくやった〉
「意外と簡単だったよ、魔術で気配を消していたら。魔様が頑張ったからだね」
にこやかに答える43代目。
彼は手の中の短剣をくるくると弄び、そのまま人質にされていた人たちに向ける。
「ひっ」
「あれ、泣いてんの?他人が死んだだけなのに」
「う、ウィスカ様…っ」
動かない勇者の名を呼ぶが、やはり反応はない。
人質の国民たちは表情を歪め崩れ落ちた。
それだけで、彼がどれだけ慕われていたのかが痛い程にわかる。
「さてと…今のことは忘れてもらわないと」
〈記憶操作も忘れるな〉
「うん、僕は死んだことにしてもらわないと」
そう笑むクルーズは、足元に魔法陣を広げる。
その光の色は何とも奇妙なものだった。
──…金と銀の、混合色のような。
「まずこの遺体を…」
呟いたクルーズは、ウィスカに指を向け一振り。
すると、42代目の姿が一瞬にして43代目のものとなった。
驚く人々に彼は笑いかける。