「……う…」


地面に倒れ込む。

自分にはこんな致命傷を治せるほどの魔力はない。

ぼやける視界の中で、赤に染まりながらウィスカは先程会った息子に想いを馳せた。



(………ああ)


大事な愛する一人息子が、悲痛な表情を覗かせていたのは。



(…このことを、知ってたからか)


ナティアもこの先そう長くはない。

きっと、独りになって、そしてその結果生きるためにあんなに大人びて。




「ごめんな…アレン」



──…けど、最期に笑顔を見れてよかった。


ぽつりと呟くウィスカに、再び振り下ろされる短剣。

そんな43代目には目も暮れず、42代目勇者は瞼を下ろすと最後に笑った。




(ナティアも…散々待たせてこれか…。怒られるな…)





でも。





「愛してる…ナティア、アレン…。大好きだ」