「くぅん」


ルルが魔王を見て体を震わせた。

アレンが撫でてやると、ぴたりと傍に貼り付くようにおすわりする。


そんな様子に、ルティは少し眉を下げ微笑んだ。



(優しく育ったよなぁ)


キツい言葉も多いが、心を開いた人や動物に関してはわかりにくいところで気にかけていたりする。

ルティはアレンの背中を、少し嬉しそうに眺めた。






そうこうしているうちに、キィンと高い金属音が鳴った。


ルティが振り向くと、剣を交えた魔王と勇者。

ウィスカは流れるように連続で技を決め込む。

魔王は真っ黒な剣でそれを受け止めては回避していた。



「……?」


食い入るように見ていたアレンが微かに首を傾げる。

どうしたと目で訊けば、戦闘を見ながらもルルを撫で小さく答えた。


「……俺が戦ったときは…剣も魔法もはじく結界がアイツを囲ってたんだけど…」

「あぁ…それがないってか?」


そう問えば、頷く。


「力が完全じゃないのか…」と呟くアレンだったが、ルティはとりあえずわからないので黙って自分も頷いておいた。


すると、また高く響く剣の音。



「!」


自分たちに向かい飛んできたそれを、ルティとアレンは慌てて避けた。

ざく、と刃物が隠れていた茂みの葉を真っ二つにする。