そうして首を傾げながらもアレンに着いていき、辿り着いた場所は──…



「…地下牢?」



眼下に広がる石の階段。

中から吹き抜ける冷えた風。


そこは昔海賊王がよく通った、少々冷たい印象を与える牢だった。


頷いたアレンは無言で階段を降り始める。



「おいアレン」

「……ん?」

「何で地下牢なんだよ?」


当然とばかりに進む現代勇者に訊くと、彼は振り向きルティを見上げ頭をかしげた。

その仕草は母親譲りのもの。


この時代にいるからか、やけに昔を思い出すルティは少し懐かしくなった。



「何でって…魔力を吸収するから」

「吸収?あぁ、地下牢の床か!」

「…いや、使うのは扉。扉の前でやれば、魔力の波紋を拾ってくれるから」


魔力を使うときに察知されるのは、そこから広がる波紋。

それさえ消えてくれれば、魔法を実行してもバレないという訳だ。


「ふーむ…」

「…別にわからなくていい」


唸るルティに溜め息をつき、アレンは一言添えておいた。

こういうパターンはギルクで慣れている。



「まあ任せるわ、そういう系は」


ケラケラと笑うおっさん。

アレンも苦笑いすると、目の前に現れた巨大な扉を見上げた。


勇者以外の侵入を許さない、固く頑丈なそれ。