「何でわかるんだって顔だな」


苦笑したウィスカはまた自分と同じ色の頭を軽く叩いた。

アレンが俯けば、ほら行けと背中を押してくる。



「…あの、」

「ん?」

「……ありがとう、ございます」


ウィスカの顔を見れず、それだけ言ったアレンは踵を返した。


そう、本来ならルルを探さなければいけないのだ。

あまり時間は浪費出来ない。




そんな駆け出した青年の背中を見送り、ウィスカはふっと優しく笑みを浮かべた。

それから大きく、大きく叫ぶ。



「アレン!」

「!」


名前を呼ばれ、アレンは立ち止まった。

振り返ると、満面の笑みの彼。


その距離を保ったまま、父は穏やかに言った。



「頑張れよ」

「………、」


気付いていたのか。


そう悟ったアレンは、複雑な気持ちで立ち尽くす。

けれど嬉しい気持ちは隠せなかった。


右腕を大きく上げたウィスカは、ぐっと親指を上げる。


それを見たアレンもゆっくりと同じように腕を上げ、それから、笑った。




「ありがとう、父さん」




穏やかに、柔らかい笑みと共に。