「俺も最初は自信なかったんだよな。歳くった大臣クラスの軍人には見下されるわ、襲われるやらで」


今は家族が行方不明だし、と苦笑いするウィスカ。

けどな、と目を細めると、彼は城をいとおしげに見つめた。


「そんな俺を支えてくれる仲間が出来た。だから今まで頑張れた」

「………………………。」

「お前もそういうのいるだろ?」


笑いかけてきた父に、アレンは無言で頷いた。

それから今名前を借りている親友や小さいくせにでかい声の二児の母、少々口うるさい側近を思い出し少し笑う。

もちろん、大切な彼女も。



「そうか。よかったよかった」


満面の笑みを浮かべたウィスカは、アレンの頭をポンポン叩くと嬉しそうに言った。

慣れない感覚に歯痒くなるも、アレンは黙ってされるがまま。



あと少し、



(……あと少しでいいから)



──…この人と、一緒にいたい。




しかし、そんな願いも虚しく。




「やることがあるんだろ?」


そう言ったウィスカが、立ち上がってアレンを引っ張った。

同じく腰を上げることになったアレンは、きょとんとすると彼を見上げる。