今度こそ別れの挨拶。

それらを交わしてヴァンヌらの隠れ家から出ると、夫婦は外にまで見送りに来てくれた。


手を軽く振り別れて、アレンとルネの二人は帰路につく。


その背中が見えなくなるまで、ヴァンヌはずっとその手を振り続けた。





そして、辿り着いた皇居で。





「…………………。」

「…………………。」

「…………………。」

「…………………。」



ピリピリと張り詰めた空気。

イライラと揺れる長い足。


…帰ってきて早々不機嫌なアレン。


お留守番組だったイルとマケドニスとルティの三人は、皇帝が与えてくれた部屋の隅っこで縮こまっていた。

ああいうアレンは触発しない方がいい。


経験からそう知っている三人は、アレンの横に突っ立っているルネの方を呼び寄せる。



「ちょっとルネ、なによあれっ」

「なんであんな不機嫌なんだよ」

「石は?ないのか?」


一気に質問されても知らん顔なルネは、ちらっとルティを見て「ない」とだけ呟いた。

その言葉に愕然とする三人。

なんで?と囁いたイルに、ルネはゆるゆると首を振った。