父が彼女──きっと母に、送った紅い石のアクセサリー。

青年の頭に思い浮かぶのは一つだけ。


「ネックレス…」

「ん?」

「…紅い石の、ネックレスがある」


小さく呟いたアレン。

ヴァンヌはそれを聞くと、目を細めきっとそれよと頷いた。


紅い石のネックレス。


アレンが旅のときにも持って行っていた、母の形見。

小さい頃、不思議な力を持ってるのよと首にかけたそれを母は見せてくれた。

いつかアレンも大切な人にあげてね、そう言われた記憶がある。


「…でも、かなり小さかったけど…」

「…一部をネックレスにしたとか?」


誰かさんのせいで大分少なくなったケーキを食べ終えたルネが言う。

丸ごとかじりついたせいで口まわりにクリームがついているのには気付いていないようだ。



「ネックレスの石だと小さすぎよ。石の効果は薄そうねぇ」

「…俺が持っていたのは手のひらサイズだった」

「ならそっち探した方がいいんじゃないの」


口々に喋る天使と悪魔。

アレンは三人を眺めながら、少し目を伏せた。



「…探してみる。ありがとう」


その静かな謝礼にヴァンヌとデスティンは笑顔を見せた。

デスティンの珍しいそれに驚きつつ、アレンは席を立つ。