「お前の父さんが一つ持っていた筈だ」

「父さん…?」

「ああ!」


話を聞いていたヴァンヌがポンと手を打つ。

どうやら思い出したらしく、ちょっと興奮しながら身を乗り出してきた。

さりげなく後ろに退いたアレンは目でどういう意味だと訴える。


「昔、私がデスティンに護身用にあげたのをウィスカに譲ったのよ。一緒にいるようになって、一つでいいよふになっふぁふぁら」


懐かしむように話すヴァンヌは、ルネのケーキを横から頂戴して食べながら教えてくれた。

最後がよくわからなかったが、とりあえず理由はわかったので相槌を打つ。


「でも家にもそんなのなかったけど…」

「なんかウィスカは綺麗だからアクセサリーにするって言ってたわよ?」

「アクセサリー…?」

「そう。彼女さんにあげたいってキラースマイルで言っふぇふぁわ!」


何がそんなに嬉しいのか、またもう一口ケーキを頬張ってヴァンヌはにっこり笑った。

隣で「やっぱり父親もそうなの」とか言うルネに首を傾げつつ、アレンはしばし考え込む。


「…金紅石って金色か?」

「ううん、紅色よー」

「紅…」