「ふふ、今日はお客さん多いわねー」


ケーキとお茶の謎の組み合わせを出してくれるヴァンヌ。

謎のタッグを横目で見ながら、アレンは彼女の発言に首を傾げた。


「…俺らの他に誰か来た?」

「ええ!私のね、兄さんが来たの。ルネとも会えるし今日はいい日ねぇ」

「ラヴァネ兄さん来たんだ…」


若干会いたそうなルネはケーキにフォークをぶすりと刺して丸ごとかじりつく。

こんな姉妹だしその兄さんも変なんだろうな、とアレンはデスティンがやつれている理由を察した。

お疲れ、と声をかけたときの彼の表情はしばらく忘れられそうにない。


「それでそれで忙しい勇者さまは何のご用なのかしら?」


無言でケーキを頬張っていると、ヴァンヌがいきなり核心をついてきた。

そんなところは相変わらずだな、と思いながらもアレンは話をはじめる。



「金紅石ってあるだろ?」

「ああ!あるわねぇ。懐かしー」

「今持ってない?」


少し力がこもったが、気にせず女性を見つめる勇者。

ヴァンヌはきょとんと彼を見てから、あー…と声にならない声を出した。