「どうして?」
皇居の門をくぐり、ちょうどその敷地を抜けたときだった。
今まで無言で着いてきていたが、不意にアレンに声をかけるルネ。
「…何が」
「隊長」
…無口同士の会話は果てしなく短い。
しかしお互い理解し話を続けられるこの二人。
ルネの一言に横目彼女を見やり、アレンは口を開いた。
「…アルヴェインの伝統なんだ。皇子は狙われるから、しばらく本人にも身分を隠してある程度育てる」
「ふーん…」
「ユーリの昔暮らしてた“じい”ってのは、皇帝の第二側近で…普通ならその人が連れてく」
「けど亡くなっちゃった、そういうわけ?」
訊ねたルネに頷くアレン。
少女は納得したのか彼から目を離し、しかしまた話しかけた。
「たった一人の子供のために随分頑張るのね。彼女が大変なのに」
「…………………。」
無言で目を伏せる勇者。
ルネは肩の上のリスを撫でながら、隣を歩く青年の言葉を待った。
そして次に発されたそれに、かわいくないことを言ったと反省する。
「ユーリは、似てるから」
「?」
「…俺も、自分の父さんを知りたかった。そんだけ」