先程まで降っていた雨は、雲を突き抜けると綺麗さっぱりなくなった。


真っ青な空、近くなった太陽。



「作戦は成功しました。精帝を連れて戻ります」



羽根を広げた天使は、上司に報告しながら空を飛ぶ。

その後ろには、鳥の姿を持つ精霊に乗って天使に着いていくマリンブルーの瞳の美女。



「なに話してるの?」

「何でもないわ。レイちゃんは着いてきてくれればそれでいいのよ」


話しかけてきた美女──レイにそう返し、天使ミュリエルはにっこり微笑んだ。

素直にそれを聞いたレイは、ミュリエルから視線を外し精霊に寄り添う。



「アレンはこれで喜んでくれるのよね?」

「そうよ。これ以上彼を利用させちゃ駄目」

「……うん。アレンは渡さないわ…」


俯いたレイ。

彼女の考えていることがわかったのか、ミュリエルは優しく笑った。


「大丈夫。悪魔さえ倒せば天下の勇者を使おうなんて輩はもう現れないわ」

「アレンはモノじゃないのよ。使うなんて言わないで」

「私の意思じゃないわ。そう悪魔が考えてるの」