「ダリアナ后妃…」


ぽつりと呟いたアレンは、窓の外を見た。

知らない内に雨が降りだしている。



そう、確かにあの人は橙色を持っていた。


悪戯っぽい笑みも細められた瞳も、ユーリとそっくりだ。


そのダリアナ后妃のお相手はシンク皇帝。

彼の金髪と后妃の黒い髪を考えれば、ユーリの金髪が少しくすんでいるのも頷ける。



「先にユーリに言わないとな…」


自分が大国の皇子だと知ったら、あいつはどうするだろう。


調子に乗るか、驚きながらも素直に喜ぶか。

それとも、…困惑して悩むか。



「…………………。」


目を細め、アレンはしとしとと降る雨を眺めた。

何だか大変な奴を身近に置いてしまったらしい。


(……でも親は知りたいよな)


ユーリの両親は生きている。


それなら、会わせてやらなければ。


手がかりだと喜び勇んでいたユーリの笑顔を思い出す。

あんなに素直な笑みは見たことがない。


少し微笑みながら、アレンは伸びをして立ち上がった。

執務も残りの時間に頑張れば何とかなるだろう。

修行だって今日はない。


アレンは部屋から出て図書室を去り、まだいるであろうユーリを探しにかかることにした。


内心レイにも会わないかな、などと少し期待しながら。