ポケットに大事な白い箱を入れ、立ち上がる。

彼女の元に向かう為に部屋を出て、次の場所に向かった。


向かった、が──…



「ど~んッ!」



……わざとらしく口でそう言い、何故かユーリが後ろからぶつかってきた。


振り向いたアレンは少年を寛大な笑顔で迎えてやる。



「失せろ」

「顔とセリフが合ってないんだけど!」


そんなツッコミも無視し、アレンはユーリの後ろにいるアデルを一瞥してからまた歩みを進めた。

しかし今度は抱き着かれる。

少し引きずって鬱陶しくなり、アレンはユーリをつまみ上げると床に放って放置した。


「ひどッ!なあアレン待てよ!」

「…忙しい」

「どうせレイ様んとこ行くんだろ!」

「悪いか?」

「開き直んな!」


睨まれても必死にアレンにしがみつくユーリ。

何なんだ一体、そう顔に出ていたのかアレンにくっついたまま離れないユーリは彼を見上げ眉を下げた。


「なあ、ちょっとでいいから話聞けよ」

「…………………。」


それが人に物を頼む態度か。


しかし口調こそ生意気なものの、ユーリはどうやら本気らしい。


心優しい勇者様は少年の手を引き剥がし、「何」とだけ訊ねた。