｢｢お待た｣｣

「斬られるか窓から叩き落とされるか選べ」

｢｢ごめんなさい！｣｣


入って早々短剣を投げ付けられたのはやっぱりというか何というか、ギルクとルティの師弟コンビ。

その後ろからマリアンヌが顔を出し、アレンがお怒りする前に扉を魔法で直しなさった。


きちんと人数分の紅茶まで持ってきて、更にはアレンが投げた短剣を丁寧に返してくれる。


「さすがマリアンヌ」

「お褒めの言葉ありがとうございます、マケドニス様」


完璧スマイルで答えた使用人第一責任者。

アレンはマリアンヌに修理と短剣の礼を言うと、ギルクとルティを冷めた目で睨み付けた。


蛇に睨まれた蛙のように二人は縮こまる。


「……コニスとシリティーは？」


短剣をいつでも投げ付けれるように手で玩びながら訊ねた勇者。

側近も武帝も海賊王もかなり恐怖した。

しかしマリアンヌだけは物怖じせずににっこり笑う。

さすがリルムの従姉。


「コニス様が遊ん…コホン、サボっていて仕事が溜まったのをシリティー様がお怒りになっています」

「言い直した意味は？」


マケドニスが思わずツっこむ。

しかし華麗にそれをスルーし、使用人は「連れてきます」と一言残して勇者の間を出た。