「いいか。お前は私だけを信じろ。昔も言っただろう」

「……………………。」

「仇をとって、お前の母親を安心させる」

「…………はい」


ゆっくりと頷くディルネ。

その表情は良いものではなかった。


それをどう解釈したのか、ジリルはフッと笑みを浮かべると娘を傍に呼ぶ。


「……ディルネ、大丈夫だ。お前の母親は幸せだった。お前もそうしてやる」

「………父様」

「欲しいモノは何でもやろう。お前はアレを手放したくなかったんだな?」

「グロアもですわ」

「そうか。わかった」


面白そうに微笑みながら頷くジリル。

彼は「時間はかかるが…」と予め娘に言っておき、しかし必ず満足させてやろうと約束した。


「さぁ、お行き。お前にはまだやることがあるだろう」

「………はい。失礼します」


まだここにいたい、そんな顔をしながらもディルネは父から離れた。

軽く礼をしてから少し微笑み、踵を返す。



「……本当に…そっくりだ」



バタン、と扉が閉まると同時に、ジリルはぽつりと囁いた。

今しがた閉じられたそれを超えた先にいる娘に思いを馳せ、優しく目を細める。


しかし次にその口から出たのは、ディルネに対する言葉ではなかった。





「……私はお前とディルネさえいれば、それでよかったのに…」