ジリルの厳しい言葉にディルネは押し黙った。

そう言われるともう何も言えない。


縮こまったディルネをまだ見下ろしていたジリルは、ふと目を閉じると今度は妖しい笑みを浮かべる。

それに気付いた女性は、不安そうに彼を見上げた。


「……心配するな我が娘よ。血ならまだある」

「え…」

「保存用に捕らえていたエレス族から定期的に採っていた血と、勇者から採っていた血を保管してある」


得意気に言うと、ジリルは懐から小さな瓶を取り出した。

そこに入った赤色の液体を見てディルネは驚く。


「勇者の血…。一体いつ…」

「お前やゲインの愚か者があそこにいない時だ。まだ何本かある。…ああ、お前の義妹もいない時もだな」

「………グロア…」


言われてディルネは眉を潜めた。

まだ、グロアが裏切ったのか無理矢理勇者に協力させられたのかがわからない。


しかしジリルは裏切りだ、と決定付けていた。



「あの娘は天使の子供と仲良くしていた。ディルネ、その罪はわかるだろう」

「はい。けれど…」

「義妹を信じたい、と?」

「………可愛がっていた、つもりなので」


囁いたディルネにジリルは嘆息した。

ビクリと震えた娘を見て、情けないと叱咤する。