強がりながらも意志は強い。

自分と同じ色の瞳には、同情なんかいらない、という訴えが見てとれた。


何年も何年も牢屋にいた彼女の身体を労ったのだが、いらぬ心配だったらしい。


「…ぶっ倒れんなよ」


「そっちこそ」


お互い不敵に笑ってそれだけ言った。

端から見たら奇妙な光景だ。






「あ、アレーン!」


しばらく歩いていると、あの悪魔の少女の甲高い声が聞こえてきた。

アレンは何もない場所に歩み寄り、小さく何か呟く。


途端にそこには何十人もの集団が現れた。


「誰も来なかったか?」


「えっとね、狼が通ったわ!でもアレンの魔法のおかげで気付かれなかった♪」


「狼…」


グロアの報告にハルアが頬をひきつらせた。

何でそんなに余裕なんだ、と少々感性のおかしい少女を見やる。


「狼…かわいかったのに…」


ついでにポツリとルネが呟いたのを、ハルアは聞き逃さなかった。



「で、どうだったの?」


期待の入り交じった目を向け訊ねてきたのはレノディア。


森の奥を見ていたアレンはハルアを指差し、

「こいつが案内してくれる」

とだけ話した。