アレンの知る限り穏やかでほのぼのな筈の皇帝が、大声あげて目を真ん丸にした。


ダリアナを見つめている彼にハルアは少々ついていけないようだ。



「ダリアナが素直になった!」


「はり倒されたいのかシンク」


「いや、いや…。楽しかったか。よかった」


「…なんじゃ」


今度はアレンの知っている穏やかな笑み。


それを浮かべた皇帝は自分の妻であるダリアナを優しく見つめる。


ダリアナ后妃は少し赤くなって彼を睨み返した。



「…アレン、この人が皇帝様?」


事態が飲み込めず頭が破裂しそう。


そう思いながらハルアはアレンに声をかけた。


ビックリして固まっていたアレンは、そちらを見ると頷く。



「…賑やかな人ね」


「…俺の知る限りでは穏やかな人だったんだけどな」


落ち着いていて話しやすいいい人だと思っていた。


いや、今もいい人だが。



「…あの、皇帝」


いつまでもニコニコして無言でのろけだした皇帝。

勇者は遠慮がちに声をかけた。


すると、皇帝は勢いよく振り返る。


アレンはかなり面食らった。



「あぁ、なんだいアレン君。あぁそうだマケドニス君にも連絡しないとね」


「…え、マケドニス?」


「ちょうど二時間前かな。この国に来ているよ」


「!」