「…レヴィオル国勇者、アレン=ブロドニス…」


そう呟いた声は、女性にしては少し低かった。


目が合ったアレンは頷くと口を開く。


「…はい、そうです。突然のご訪問お許しください」


「…いや、よい。気にするな」


勇者が目を見て言ってから頭を下げると、ハルアも慌ててそれに倣った。


それを見た女性──…アルヴェイン国后妃は、目を細め少し微笑む。


そして、しっかりした声で力強く話しはじめた。



「…わらわはアルヴェイン国后妃ダリアナ=アルヴェイン。はじめまして、じゃな。

わらわの接待なぞで悪いが、今は旦那はいないのでな。けれどもすぐに帰ってくる。しばし待つがよい」


后妃──ダリアナはそう言って首を傾げ微笑み、黒い髪をさらりと揺らした。


ありがたい言葉にアレンは頷き、ほっと力を抜く。


はじめて会ったので少し警戒していたが、そんな必要はなかったようだ。



「ところで…、そなたは?レイ=アナチェル、ではなさそうだな」


特徴的な話し方で、ダリアナ妃はハルアに声をかけた。


ハルアはいきなり自分のことを聞かれ、どう説明すればいいのかわからず固まってしまう。