三十路と聞いた瞬間いきなり怒鳴ったハルア。


何で怒るんだ、とアレンは眉根を寄せ頭を少し傾けた。



「“三十路”も大人の女性には禁句!女は歳を気にすんのよっ」


「…変なの」


「もう!…で、歳が何なのよ?」


このままじゃ埒があかない、そうやっと気付いてハルアは咳払いするとアレンを睨んだ。


(アンタといたら調子狂うのよっ!)


そう心の中で毒づいて軽く舌打ちする。



「…いや。ナティアナティアって…仲良かったのかなって思って。でも同い年には見えないし…」


そんな彼女の苛ついた様子を綺麗にスルーし、青年はそう呟くと伏せていた顔を上げた。


その言葉にそういうことか、とハルアは納得する。



「…あぁ。ナティアは村の皆と仲良しだったわよ。それこそ老若男女問わずに、ね」


あたしも大好きだった、と溢して、エレス族の女は懐かしそうに笑った。


その顔が少し悲しみを帯びていることに気が付き、アレンは表情を曇らす。



「…あの、さ」


「…何よ」


「……また今度、落ち着いたら…。ラレスカで何があったか、聞いていいか?」


その遠慮がちな問いに、ハルアは碧の目を見開いた。


アレンをまじまじと見つめ、それから小さく微笑む。



「…えぇ。いいわよ」