疲れているのだろうか、とアレンは勘繰った。


何しろルネは囚人の全員の怪我を治し、更にはアレンのあの左腹のそれも治療してくれた。


『天使の力ならちょっとの魔力ですぐに治せるから』


それなら悪魔にはバレないでしょ、そう言って難なくやってみせたルネにグロアですら驚いていた。



凄い、と彼女に褒められ、ルネはその時だけ微かに微笑んだのだ。


その笑みに何か引っ掛かったことを思い出し、アレンは何だったっけと思案した。




「…なあに?」


考える内にじっと見ていたのだろうか。


ルネが首を傾げ顔を覗き込んできた。



「…あ、何でもない」


「?…変なの」


リィと戯れながら無表情で言うルネ。


普段無表情だと言われている自分はこんな感じなのか、とアレンは軽くどうでもいいことを思った。


しかし今はそれどころではない。


さっさとこの薄暗い城とおさらばして、ジスカル国を出なければ。




「最後尾に誰かエレス族二人いといて。戦う術がない奴は真ん中に挟む」


「…お世話になります」


魔力を持たず武器もない囚人たちは、申し訳なさそうに頭を下げた。


特に気にもしていないアレンは、立ち上がると服についた埃を払う。