世界ファンリュジョンにある四つの大陸。
そのうちの西のそれ、ウェンスト大陸。
そこを丸々占領するレヴィオル国の『勇者の城』では、今日も賑やかで平和な一日が過ぎていた。
まず、秋に染まった城の庭園にすらっとした一つの人影。
それはこの国の国王である、第44代目勇者アレン=ブロドニスのものだった。
アレンは何をしているのか、その曖昧な色の髪を風に揺らし立ったまま瞼を下ろしている。
しばらくそうしていたアレンだったが、不意に赤や黄色の色とりどりの木の葉がざわりと揺れた。
その瞬間、アレンに向かい勢いよく飛んでくる雷撃や燃え盛る炎。
それらの攻撃の的であるアレンは、当たると相当痛いであろう魔法らが自分に届く前に、碧の瞳を開き右腕を前に突き出した。
すると彼の周りに一瞬風が吹き荒れ、向かって来ていた攻撃魔法は瞬時に消え去る。