「勇者はどうだ、ディルネ」
大きなベッドが一つだけある、とても質素で広い部屋。
そこに訪れ中へと入ったジリルが、ベッドに腰掛ける女性の悪魔に声をかけた。
「ジリル様…」
「今はよい」
「…父様。よく眠ってますわ。まだ起きません」
「……そうか」
娘の返事を聞いたジリルはベッドにカツカツと歩み寄り、眠り込む青年の横に立つ。
掛布団もなしにただベッドの上に横たえられた青年――勇者アレンは、薬が効いたのかぐっすり寝ていて全く起きなかった。
白い敷布団についている血も気にせずに、ジリルはそっとアレンの頬を撫でる。
「…美しかろう?気に入ったか?」
「はい」
「それはよかった」
にっこり微笑むディルネにこちらも笑顔を向けるジリル。
それはまさしく優しい親の顔。
「コレには役に立って貰わねば。出来れば、一生」
「そうですわね。戦って思いましたが、凄い魔力です。魔力がなくても敵いませんでしたが」
「…現在の史上最強の男、かな」
「はい?」