少し顎に手を添え考え、シリティーはふと顔を上げた。


珍しいしかめっ面の海賊王を見つめ、静かに問いかける。



『…森で争った形跡があったんですね?』


「そうだ」


『そして、その形跡を森のエルフに留めてもらっている』


「ああ」




『…そのエルフ達は、アレンが戦っている時どうしていたのですか?』





――…棘のある冷たい声。



それにルティは伏せていた目を上げた。



シリティーは表情こそ変えないものの、つり目の紫のそれに冷たい怒りを宿している。



彼女が勘違いしない内に、慌ててルティは取り繕った。




「待て、森のエルフ達と動物はみんな眠らされていたんだ。誤解するな」


『眠らされて…?』



『……ねぇ、私もわからないことがあるんだけど』



白髪の少女に次いでクナルが疑問の声をあげた。


ルティは今度は何だとそちらに目を向ける。



『さっき言っていたけど…、“時”を止めるって…何?

そんな魔法、聞いたことないわ』



夫と同じ表情で言う彼女。



そんな彼女の問いにルティはあぁ、と相づちを打った。