時は少し遡り、場所は北大陸のミレアニア湖。
「アレン…遅いなぁ…」
かれこれ一時間以上愛する彼氏を待っているレイ。
アレンの予想通り早めに来ていた彼女は、湖に足だけ浸しひたすら彼のことを考え待ち続けていた。
健気な美しい少女に自然と動物達が寄って来る。
何だか絵画に描かれるような雰囲気になってきたところで、レイはいきなり立ち上がり濡れた足を地面に降ろした。
「何…?」
南の方角を睨み、呟く彼女。
擦り寄る鹿を宥め肩に登った栗鼠を撫で、靴を履くともう一度同じところに視線を向けた。
「…凄く強い魔力…。この魔力はアレンよね?移動魔法したのかしら」
きっとそうだわ、レイはそう結論付けてそわそわと髪をとき身なりを整える。
しかし、…来ない。
アレンであるのは間違いないが、移動魔法ではなかったようだ。
首を傾げて少し悲しくなっていると、また大きな魔力を感じた。
やはり同じところから。
「……おかしい…」
潔く気付いたレイは、眉を潜め動物達と別れると早足で歩き出した。
少し湖から離れたところで、もう驚かしはしないだろうと移動の精霊を呼ぶ。