言われて素直に頷いたアレンは、すぐに仕事を持ってきた。



(…部屋を隣にしてよかった。)



そう思いながらも早速ソファーに腰を下ろし、紙とにらめっこを始める。



その横顔を見上げながら、レイは嬉しそうに頬を緩めた。


彼女はアレンといるといつも笑顔だ。



レイはその緩んだ表情のままアレンの服の裾を握り、軽く引っ張った。


気付いたアレンは仕事からレイに目線を変える。



「…ねぇ、アレン」


「…ん?」



――…耳に届くは優しいテノール。



低すぎず高すぎず、アレンは柔らかい声色で返事をしてくれる。



そんな些細なことに幸せを感じながら、レイはアレンに身を寄せた。




「…皇国ってね、神域沿いに湖があるでしょう?」


「? うん」


「私ね、あそこに一度行きたかったの」


「…………………。」




――…それはデートの代わりに連れていけ、ということか。




珍しいレイの甘えに目を細めて笑い、アレンは彼女の頭を撫でた。



それから「わかった」と短く返し、また執務に目を戻す。