ゆっくりと白いお湯に身を沈め、
窓に広がった
雨に濡れていく中庭を見つめた。

涼しげな風が時折遊びに来て
大変な風情がある。

やはり雨の匂いも五感に感じられる。

今朝日光に行った時の事をふと思い出した。

「天国…か」

確かにこの風呂は極楽ではあるが、
天国とはまた違う気がする。

あの人が探していた天国は、一体どのような物なのだろう。

金払いのいい山葵を辞めてまで
何が欲しかったのだろう。



そうあれこれ考えているうちに
すっかり湯あたりしてしまった。