「おいそこのお前!俺の名前をおちょくったからにはてめーの名前教えろや」
彼の蒼によく似た黒髪が、さらりと風に揺れる。
ソファーに腰掛けながら、私は
くすり と口元で笑う。
「私はね、長い事歌舞伎町でさなぎをやって来て…本名を忘れてしまったのよ。
だから今だけの名前を教えてあげる。私の名前は…」
「山田花子ってチェックインの際に書かれてますけど」
「もう!フロントさんは黙ってて!
私の名前は…」
「あの…あんたいつもこうほわほわしたの連れてない?公衆電話から確か…チューリップの…」
「たろいもそれは花子さん違いだ!
それはポンキッ●ーズの英傑の方だ!」
という訳で、今回の偽名は
マリアから花子になりました。