お母さんの住所はやはり変わらず岩手だった。

行くものか行かないものか、

―天国か地獄か。

わからないまま歌舞伎町を飛び出し、東京を飛び出し、そして栃木県にいる。

真っ直ぐに行こうとすればすぐに
行けるが、いかんとも結論がでず こうして今階段を下っている。

そして
私はぼんやりと思った。


遠回りしてお母さんの家の近くまで行って逃げようと。


そんな訳で階段を降りきって
私はふぅと空気を吐いた。

「なんとも…重々しい雰囲気だな」


「はは…気に入ってもらえましたか」

声の先には住職さんと思われる方が
笑っていた。